小原一真オンラインレクチャー全10回
「見る・聞く・考える・伝える」
-メディアリテラシーと写真表現の可能性
新型コロナパンデミック、そしてロシアの軍事侵攻後のメディア環境は、情報を受け取る人々が持つべきメディアリテラシーの必要性を決定的にさせた重要な出来事の一つでした。今、私たちは「共通の言葉」を失い、何が本当で何が正しいのかということを道徳的、倫理的観点からでさえ、よく分からなくなるほどに情報に翻弄されています。そして、その情報環境によって、表現者は、現在のメディア環境により自覚的になり、より慎重な考えが以前にも増して必要になっているのではないかと考えます。10回シリーズの講義では、「リテラシー」と「表現」について、「見る・聞く・考える・伝える」のそれぞれの観点から考えます。これまで写真業界向けに様々なワークショップを行ってきましたが、このレクチャーは、写真表現の豊かさを通して、現在のメディア環境におけるリテラシー、そして表現について特に国外の写真家・アーティストの具体的な事例を参照しながら考えます。
様々な立場の方のご参加をお待ちしております。
1.日程
2022年5月より毎月1回、全10回
各回2時間+質疑応答30分
第2回目 6月18日 13:00-15:30
「見えないことを記録する/記録出来ないものへの自覚とその先にある表現
- 戦争・災害の記録 2」
*希望者で日程が合わない場合は、録画した映像を翌日から共有します。講義の内容に関する質問は随時メールにて受け付けます。
2.参加方法
ZOOMを利用したオンラインレクチャーです。リアルタイムでの参加が難しい場合でも、講義翌日より録画映像を共有します。内容に関する質問はメールで随時受け付けます。ZOOM環境があることがリアルタイムで参加することの必須条件です。録画ビデオのみの視聴を希望することも可能ですが、参加費は同額です。
3.参加費(全10回分)
一般12,000円(税込)
学生(大学院生以下)8,000円(税込)
4.応募
随時受け付けております。期日を過ぎた過去の回の講義はオンラインビデオでご視聴頂けます。
5.対象者
様々な社会問題に興味があり、視覚メディアを用いた表現に興味のある方、もしくは、メディアリテラシー(情報の読み解き方)に興味のある方。学生から社会人まで年齢を問わず、また写真・メディアにこれまで携わったことのない方でも、ご興味ありましたら是非ご参加ください。出来るだけ伝わりやすいよう準備したいと思います。
6.支払方法と申込み方法
Paypalでのクレジットカード決済、もしくは銀行振込での支払いが可能です。(銀行振込の場合の振込手数料の負担をお願いします。)
支払い後、下記メールアドレス宛に
①参加者氏名
②連絡先メールアドレス
③申込みの希望や特に学びたいことがあれば自由に記述してください。
④支払い方法に用いたメールアドレスや口座記載の氏名
⑤学生料金で参加費を支払っている方は出身の学校と大学生であれば
学部、学科を記載ください。
【振込先口座】
金融機関名 楽天銀行
銀行コード 0036
支店名(番号) アリア支店(225)
預金種類(科目) 普通預金
口座番号 2439253
受取人名 オバラ カズマ
7.問い合わせ
小原一真
kazuma924(at)gmail.com
オンラインレクチャーの内容(講師:小原一真)
第1回目 2022年5月14日
「私たちは何を見ているのか -戦争・災害の記録 1」
参照:Conflict, Time, Photography (2014), Tate Modern/London
第2回目 2022年6月
「見えないことを記録する/記録出来ないものへの自覚とその先にある表現 - 戦争・災害の記録 2」
参照:サイモン・ノーフォーク、エドモンド・クラーク、クロエ・デュー・マシューズ他
第3回目 2022年7月
「伝えることの実践2 -戦争について」
参照:小原一真 Silent Histories Project(2014- ), Platform On The Border(2022- )
第二次世界大戦における日本の加害と被害を記録する、ウクライナ、難民取材を通して考えたこと
第4回目 2022年8月
「写真と言葉 -認知の異なる情報を消化し、発展させる」
参照:ミケル・ソボツキー、クリスティーナ・デ・ミデル、ヴァネッサ・ウィンシップ他
第5回目 2022年9月
「何をどう見るのか -伝えるコンセプトについて」
参照:ヘンク・ヴィルスフート、ロバート・ノース他
第6回目 2022年10月
「伝えることの実践1 -核災害について」
参照:小原一真 Reset Beyound Fukushima(2011-2020)、Exposure/Everlasting(2015-16)、Bikini Diaries(2016)
福島原子力発電所事故、チェルノブイリ原子力発電所事故、ビキニ水爆実験取材を通して考えたこと
第7回目 2022年11月
「本というメディア:写真集が持つ可能性について」
第8回目 2022年12月
「伝えることの実践3 -伝染病について」
参照:小原一真 Fill In The Blanks(2021-)
新型コロナウイルス感染症とハンセン病取材を通して考えたこと
第9回目 2023年1月
「場所というメディア:空間が持つ可能性について」
第10回目 2022年2月
「総括:これからのメディアリテラシーと表現について考える」
小原一真プロフィール
1985年岩手県生まれ。大阪府在住。写真家、ジャーナリスト。スイス、フォトエージェンシーKEYSTONE-SDAパートナーフォトグラファー。ロンドン芸術大学フォトジャーナリズム修士課程修了。2012年、東日本大震災と福島第一原発・原発作業員を記録した写真集『RESET』(ラースミュラー出版/スイス)、2015年には太平洋戦争で被害を受けた子供たちの戦後を描いた「Silent Histories」(RM/スペイン)を発表。長期的視野からチェルノブイリ原子力発電所事故を記録した 『Exposure/Everlasting』(2015)では、世界報道写真賞をはじめ、国際的な賞を多数受賞した。2016年、フランスのFestival Photoreporterより助成を得て、ビキニ水爆実験で犠牲をおった漁師に焦点を当てた「Bikini Dairies」、2018年にはオランダ大使館より助成を得て、第二次世界大戦で日本軍によって犠牲を負った人々の戦後を描く「A story」を現在も進行中。災禍の中で見えなくなっていく個に焦点を当てた作品制作に精力的に取り組みながら、2020年には米ナショナルジオグラフィック協会より助成を受けて、コロナ禍の最前線で働く看護師・介護士による看取りの記録を続けている。本を媒体としやヴィジュアルストーリーテリングのワークショップをヨーロッパを中心に開催する他、国際的なBook Awardの審査員なども務める。写真集は米TIMES紙Best Photobook選出やParis-Photo Aperture photobook Awardショートリストなど海外で高い評価を得ている。
第1回「戦争の記録 1 - 私たちは何を見ているのか」
2014年からロンドンのテート・モダンで開催された「Conflict, Time, Photography」展は、私が最も影響を受けた展示の一つであり、戦争をはじめ、長期的な影響をもたらす大規模災害に表現者はどう向き合うべきなのかということを強く考えさせられた内容でした。写真展では、「戦争が起きてから撮影までに経過した時間」に沿って写真がキュレーションされています。シンプルなアイデアながら、その時間軸で写真を見つめるというのは、とても新鮮な経験でした。それぞれの部屋は、戦争が起きてから「数日後」、「1週間後」、「10年後」、「100年後」という時間軸によって分けられます。イラク戦争もアフリカ大陸で起きた紛争も全てがごちゃ混ぜになって、あくまで撮影までに要した期間で写真が並びます。当然ながら、100年前の戦争で開戦から一ヶ月後に撮影されたものと、湾岸戦争勃発から一ヶ月後に撮影されたものは完全に異なります。展示は、時代の変化とともに戦争がどのように伝えられているのかという具体的な変化を示しつつ、そのメディアの進化がもたらした情報の速度と内容の変化がどのように社会に影響を与えているのかということを考えさせます。
第一回目「私たちは何を見ているのか」では、この展示のキュレーションを切り口に、今、私たちが見ているものについて長期的な視野から、現在のものの見方を俯瞰したいと思います。それによって、私たちが現在、物凄いスピードで消費する戦争の情報の見方を考え、メディアが私たちに与える影響について考えます。